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製品情報

利用事例9

AWG波長合分波器の最適設計

日本発条(株)

近年、インターネット等の普及により情報通信量が急増している。それに対応するために、1本の光ファイバーに異なる波長(色)の光をひとまとめにして伝送することで、大量の情報伝送を可能にする波長分割多重WDM(図-1)が注目されている。このWDMのキーテクノロジーとして、異なる波長の光をひとまとめにしたり、波長毎に分離したりするデバイスであるAWG波長合分波器(以下、AWG)が重要となっている。

AWGの特性に対する要求事項として光の散乱損失の低減があげられる。光ネットワークシステムの大規模化が進み、光ファイバーを伝搬する光が多数の光部品を通過するようになるため、個々のデバイスにおける損失低減は非常に重要である。

日本発条(株)(以下、ニッパツ)ではAWGの開発に際し、光の散乱損失を最小化する目的でDesignDirectorを利用して設計を行い、画期的に損失の小さいAWG波長合分波器の開発に成功した。


図-1 WDMの伝送技術

ニッパツのAWGの特長

図-2にAWGの概要を示す。入射した光はスラブ導波路とアレイ導波路部分で回折され、波長毎に分離される。ニッパツでは損失を低減する目的で、スラブ導波路にアイランドと呼ばれる光の位相を調整する要素を設置し、大幅に損失の低減を可能とした。アイランドの形状はアイランドの界面における光の屈折率と速度の関係から台形形状となっているが、このアイランドの形状を決定する際にDesignDirectorを利用して最適化を行った。


図-2 ニッパツAWGの概要

設計要因と直交表


図-3 設計要因

アイランドの形状を決定する際に考慮すべき設計要因を図-3に示す。これらの中から損失に大きく寄与すると考えられた4要因を選択し、交互作用を考慮して実験計画を立てた。

要因数 : 4
水準数 : 3水準
直交表 : L81


図-4 直交表割付

特性の評価

設計したAWGの評価は、ビーム伝搬法(BPM)に基づくシミュレータにより光強度の劣化(挿入損失)を算出することで行った。BPMとは光の伝搬を近似的に求める数値解析法の一つである。光の伝搬はMaxwellの方程式に基づく波動方程式で表されるが、BPMでは光の伝搬方向に沿って分割された微少区間において、波動方程式を逐次的に解くことで光伝搬を求めている。

この事例ではBPMを利用してAWGを通過した後の出力光強度を求めることで挿入損失を計算している。図-5には一例として、入力光を波長の異なる8種類の光(λ~λ)に分離したときの損失を示す。各波長λ~λにおける損失”挿入損失”が小さいほど良い設計と言えることから、L81直交表が示す81通りの設計変数の組み合わせに対して挿入損失を計算し、挿入損失を推定する応答曲面近似式を作成し、数理計画法により最適な設計変数を求めた。


図-5 挿入損失

損失 Loss(dB)=-10×log(Pout/Pin
ここで、
in : 入力光強度
out : 出力光強度

最適化計算

目的関数を挿入損失として最適化計算を実施した。その結果、アイランド形状がアレイ導波路に向かって幅の狭まった台形形状が最適であることが分かった。


図-6 最適化されたアイランドの形状

表-1 最適化条件
設計要因 設定4要因
目的関数 挿入損失 → 最小
側面制約条件 設定下限値≦X≦設定上限値
(i=1,・・・,4)

最適化による効果

設計最適化したAWGの特性を評価するためにBPMで挿入損失を再計算し、アイランド無し、アイランド最適化前と比較した(図-7,8,9,表-2)。アイランド形状を最適化したAWGは挿入損失が2.2dBとなり、アイランド無しより7.7dB、最適化前より1.8dBの特性向上が得られた。

また、設計最適化された開発品を製作し特性を実測した。その結果、アイランド形状を最適化したAWGは挿入損失が5.7dB減少し、最適化の効果を確認することができた。


図-7 アイランド無し


図-8 アイランド有り 最適化前


図-9 アイランド有り 最適化後

表-2 最適化による挿入損失の改善結果
  アイランド無し アイランド有り
最適化前
アイランド有り
最適化後
挿入損失BPMによる計算値 9.9dB 4.0dB 2.2dB
挿入損失実測値 11.6dB - 5.9dB

参考文献

  1. OFC2002, Anaheim, (March,2002) ThGG36, A novel AWG demultiplexer composed of slabs with islands, J.Yamauchi, Y.Yamamoto,H.Nakano,M.Masuda, R.Tazawa, Y.Natsume, and S.Kawaguchi
  2. 2002年電子情報通信学会総合大会(春) C-3-65,スラブ導波路にアイランドを設けたAWG(?)増田享哉・田澤亮一・夏目豊・川口茂・山内潤治・山本裕一・中野久松
  3. http://www.nhkspg.co.jp/opt/infoFrameSet.html
  4. OECC2002, Yokohama, Japan (July,2002) 11B3-2, to be published

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