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製品情報

利用事例7

自動車衝突安全設計における補強部材の最適化

横浜国立大学/(株)本田技術研究所


オフセット衝突イメージ図

近年、CAEの発達により複雑な衝突現象が高精度に計算可能となり、安全構造開発に大きく貢献できるようになった。しかしながら、非線形動的問題である衝突現象に対しては実用的な最適設計手法は少なかった。横浜国立大学と本田技術研究所のグループは衝突現象のような非線形動的問題に対して効率よく最適計算が可能な方法としてDesignDirectorを用いた最適化手法を提案した。本事例では、車両を開発する上で正面衝突における乗員の生存空間の確保が非常に重要であることに着目して、フロントとキャビンに使用されている補強部材の板厚を最適化することで重量の軽量化を実施した。

解析モデル


図-1 解析モデル

米国道路交通安全局(NHTSA)で公開されている正面衝突のセダンモデルを一部改良して使用した(図-1)。

・節点数 約51,200
・要素数 約37,000
・ハイブリッド?(Dummy)搭載
・解析ソフト PAM-CRASH

解析条件・評価特性


図-2 評価特性値

時速56[Km/h]でデフォーマブルバリアへのオフセット衝突を想定し衝突から150[msec]後までの解析計算を行い、評価特性としてToe-Boardの侵入量、A-C pillar間の変位(図-2)と重量を求めた。

評価特性
・Toe-Board侵入量(YToe-Board
・A-C pillar間変位(YA-C pillar
・重量(Yweight

実験計画法

衝突時に主にエネルギーを吸収する部材としてフロントとキャビン周りから11部材を選択し、グループ化して、その板厚を設計要因(図-3)とした。

X1Rail inner
 Rail outer
X2Front floor upper
X3Hinge pillar inner
 Hinge pillar outer
X4Rail front floor pan
X5Rocker reinforcement
 Rocker inner
 Rocker outer
X6Engine cradle-left
 Engine cradle-right


図-3 設計要因

すべての要因のグループは表-1に示す水準を設定した。ここで、すべての水準値はそれぞれの設計要因の上限値で正規化したものである。また各要因は直交表L18(2×3)に割付けられ(図-4)、直交表の組合せに従って解析を行い、評価特性であるToe-Boardの侵入量(YToe-Board)、A-C pillar間の変位(YA-Cpillar)と全体重量(YWeight)を抽出した。
表-1 Levels of Factors
Level 1 Level 2 Level 3
All Factor 0.5 0.75 1.00

・ L18(2×3)直交表に割付。
・ 18条件の解析を実施。


図-4 直交表割付

これらの評価特性に対し分散分析を実行し、有意であると判断した次数の項を使って推定式(式(1)、(2)、(3))を立てた。また、推定値と特性値を比較したグラフを図-5、6、7に示す。


図-6 A-C pillar間変位の特性値と推定値


図-5 Toe-Board侵入量の特性値と推定値


図-7 全体重量の特性値と推定値

最適化計算

目的関数は影響度解析で求めた重量の推定式とし、制約関数にToe-Boardの侵入量とA-C pillar間の変位量の推定式を用いた。設計要因は連続変数とし、最適計算は逐次二次計画法を使用した。その結果を表-2、3に示す。Initial Weight1514.37[Kg]に対してOptimum Weight1494.61[Kg]の軽量化(表-3)できた。

表-2 最適化結果
設計要因 設定6要因
目的関数 重量(Yweight) → 最小
weight=1468.77+16.41X1-0.053X12+3.47X2+0.067X22+8.22X3
+0.067X32+2.42X4+0.067X42+5.69X5+5.69X52+6.05X6+0.04X62 [kg]
挙動制約条件 toe-Board≦0.1[m]
A-C pillar≦0.035[m]
側面制約条件 0.5≦X≦1 (i=1,2,・・・,6)
最適化結果 目的値 : 1494.61[Kg]
変数値 : X1=0.55,X2=0.711,X3=0.565,X4=0.83,X5=0.662,X6=0.5
表-3 初期状態と最適化後の比較
  目的値 制約値 設計変数
重量[Kg] Toe-Board
侵入量[m]
A-C pillar間
変位量[m]
X1 X2 X3 X4 X5 X6
初期状態 1514.37 0.0226 0.0720 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0
最適化後 1494.61 0.1 0.035 0.5 0.711 0.565 0.83 0.662 0.5

まとめ

DesignDirectorを用いて、自動車衝突安全設計に対する最適化を行った。最適化の分野では扱いにくい非線形動的問題の衝突現象に対して定量的な解析ができた。その結果、オフセット衝突においてキャビンの変形量を抑えながら軽量化ができた。

参考文献

于・吉本・矢島・白鳥・本山,日本機械学会材料力学部門講演会講演論文集(Vol.B), pp. 335-336,1998.

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