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製品情報

利用事例6

圧入型コネクタの最適化

横浜国立大学生産工学科

圧入型コネクターは、電導体を介して電子デバイスを基板に固定するための部品であり、これに対するニーズは小型化、低挿入力化である。この圧入型コネクターの材質は、ピンが挿入されるハウジング部は絶縁体素材の樹脂製。挿入ピンは金属製である。そのため、ピンをハウジングに挿入する際に、ハウジングに大きな弾塑性変形が発生する。このような現象は、接触・大変形・弾塑性問題に相当する。本例題では、この複雑な現象に統計的設計支援システムを適用して挿入力の定量的の関係を求めるとともに挿入力の低減を目的とした最適化設計の検討を行った。

解析モデル


Fig.1 : Model of insertion type connector

圧入型コネクタのピン・ハウジング部に対して、図-1のような軸対象モデルを設定した。設計要因は、図-1のモデル図に示したピン部の形状を表すθ、hおよびハウジング部の材料特性である縦弾性率係数E、降伏応力σyの計4要因とした。水準数は、推定式を2次式で与えることの出来る3水準とした。各設計要因に設定した水準値を表-1に示す。なお、これらの水準値は、文献を参考にした。直交表にはL18を用いた。

Table.1 : Level value
要因 第1水準 第2水準 第3水準
θ [°] 20 25 39
h [mm] 0.12 0.15 0.18
E [MPa] 1666 2156 2646
σy [MPa] 39.2 49 58.8

有限要素法解析

構造解析には汎用の有限要素法プログラムABAQUSを使用した。解析モデルを図―2に示す。解析モデルの概略内容を以下に示す。なお、ピンは剛体壁によりモデル化した。

負荷条件としては、剛体ピンに+Y軸方向に強制変位を与えた。また、負荷履歴として強制変位最大2mmまで加えた。接触条件は、剛体ピンとハウジング部の間に設定した。なお、ピンとパウジング間の摩擦係数は、0.15に仮定した。拘束条件は、ピン部のX軸方向と、Z軸回りの回転方向およびハウジング部の下部をY軸方向に拘束した。解析により得られた挿入力と強制変位の関係を図―3に示す。また、変形図を図―4に示す。


Fig.2 : FEM model of insertion type connector


Fig.3 : Insertion force vs. displacement


Displacement = 0.25mm   Displacement = 0.65mm   Displacement = 2.0mm
Fig.4 : Deformed model

分散分析

挿入力低減が圧入型コネクターの主要なニーズであるために構造解析から抽出する特性値は最大挿入力とした。だだし、挿入力が振動しているような場合にも平均化を行わず単純に最大値を求めた。

推定式

最大挿入力に対して全ての設計要因に有意差が見られたため、これらの設計要因を用いた最大挿入力の推定式を作成した。±値は、95%信頼性限界を示す。

最大挿入力=55.445+1.3064(θ-25)+357.95(h-0.15)+0.00093733(E-2156)+0.788(σy-49)±5.955 [N]    ----式(1)

感度解析

最大挿入力に対する感度解析を行った。感度は、特性の推定式を各設計要因で偏微分することにより求めることが出来る。この感度は、設計要因の値を単位量だけ変化させたときの特性値の変化量を直接表す定量的な影響度を示している。求めた感度を表―2に示す。この表に示すように感度は、最大挿入力に対する設計要因の影響度を明確に表している。このように分散分析は定性的な影響度しか求められないが、感度解析からは設計を行う際に非常に有用な定量的影響度が求められる。

Table.2 : Sensibility of design factor
Factor Sensibility
θ 1.306(N/°)
358.0(N/mm)
0.000937(N/MPa)
σ 0.799(N/MPa)

最適化計算

最大挿入力の低減を目的とした最適化を行った。そのため、目的関数に最大挿入力の推定式を使用した。設定した最適化問題を下記に示す。設計要因は全て連続変数として扱い、最適化計算には、SQP法を用いた。最適化計算結果を表―3に示す。

Table.3 : Results of an optimization
設計要因 設定4要因
目的関数 最大挿入力 → 最小
最大挿入力=55.445+1.3064(θ-25)+357.95(h-0.15)+0.00093733(E-2156)+0.788(σy-49) [N]
挙動制約条件 無し
側面制約条件 各設計要因の水準範囲
最適化結果 変数値 : θ=21.32 [°], h=0.12 [mm], E=1666 [MPa], σy=39.2 [MPa]

最適化計算により求められた設計要因値は、ピンのテーパー角θ以外は、全て水準値の下限値であった。ピンのテーパー角θは、力の釣り合いを考えれば、小さければ小さいほど挿入力が減少するはずであるが、小さくなればそれだけハウジングに接触する面積が増すことになる。従って、最小化する際に、これらの関係のバランスを取った値となったと考えられる。

参考文献

’95年度横浜国立大学生産工学科博士論文「統計的設計支援システムの開発と応用」 柏村 孝義

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