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製品情報

利用事例5

丸型ゴムスイッチの最適設計

横浜国立大学生産工学科

近年のAV機器、OA機器をはじめとする電子機器の小型化・低価格化に伴って機構部品も同様の要求を強く受けている。人間と機械のインターフェイスとなるキーボードスイッチは、これら以外に操作フィーリングも重要な要求項目となっている。キーボードの概略構成を図―1に示す。キーボードの操作フィーリングは、キーボードの商品性や使用時の作業効率にとって重要である。このキーボードの操作時の挙動は、大変形、接触、材料非線形性を含む複雑な現象である。この挙動は、操作力と押し込み量の関係を示す変位曲線によって表され、飛び移り現象と呼ばれる現象を示すことを特徴としている。この線図から得られる特性が、操作フィーリングの指感を表す代表的な指標となっている。この特性は、キーボードの主構成部品であるダイヤフラム構造の丸型ゴムスイッチによるものである。しかし、多くの設計要因を持つ丸型ゴムスイッチにおいて操作フィーリングを制御することは難しく、影響度解析や最適化を行った例は数少ない。本解析では、操作フィーリングの指感と丸型ゴムスイッチの設計要因の関係を明らかにするために設計要因が反力変位線図に与える定量的影響度を求めた。また、この結果を使用して丸型ゴムスイッチの最適設計の検討を行った。

操作フィーリング特性


Fig.1 : Assembly of the keyboard switch with rubber diaphragm

操作フィーリングの評価は、一般的に飛び移り現象を示す応力-変位曲線(図―2)を用いて行われる。丸型ゴムスイッチはキートップから押圧部への押し込み力が加えられ押し圧が始まるとスカート部がたわみ始めて反力が増大する。ある所で座屈が起こり、押圧部に発生する反力は極大値を示す。その後スイッチが底面に接触するまで反力は減少を続け、底面に接触した後は、急激な反力上昇を示す。このような丸型ゴムスイッチの挙動のシミュレーションは、有限要素法の幾何学的非線形解析機能を使用することにより可能である。

実験計画法


Fig.2 : Typical reaction force - displacement curve

丸形ゴムスイッチは、軸対称形状であると共に負荷も変形も軸対称であるため解析モデルは図-3に示す1/2大断面とした。設計要因は丸型ゴムスイッチの独立した断面寸法であるA,B,C,Dおよびスイッチ底面とスイッチ設置面に相当する剛体壁間の摩擦係数μの5要因とした。水準数は、特性値と設計要因の関係が非線形であると仮定して二次式で表される影響度を求めることのできる3水準系とした。直交表にはL27を用いた。各設計要因の水準値を表―1に示す。


Fig.3 : Model of rubber diaphragm

Table.1 : Level Value
要因 第1水準 第2水準 第3水準
A 1.72[mm] 1.75[mm] 1.78[mm]
B 0.335[mm] 0.345[mm] 0.355[mm]
C 2.45[mm] 2.50[mm] 2.55[mm]
D 0.56[mm] 0.60[mm] 0.64[mm]
μ 0.10 0.15 0.20

有限要素法解析

構造解析には汎用有限要素法プログラムABAQUSを使用した。要素には軸対称個体要素、材料にはムーニー・リブリンで表す超弾性モデルを用いた。

負荷条件は、上端部の節点にz軸マイナス方向の一様な強制変位を与えた(図-3)。拘束条件は、軸対称上の節点にr軸方向変位拘束を与えた。接触条件は、下端部に剛体壁を設けモデルと剛体壁、およびモデル自身について考慮した。解析結果として図―4に変形図を、図―5に上端部に発生する反力とz軸方向の変位量の関係を示す。図―5は、ピークを持つ飛び移り現象を示した後、ゴムスイッチの押し圧部が剛体壁に接し急激に反力が再上昇することを表している。なお、図―5は設計要因Dを0.56mmから0.64mmに変化させ他の設計要因の水準を全て平均値とした場合の解析結果を示している。


Displacement = 1.0mm   Displacement = 1.5mm
Fig.4 : Deformed model


Fig.5 : Reaction force vs. displacement

推定式

操作フィーリングにおける指感を表すクリック感や押圧時の重さは最大反力に関連が強いため最大反力を指感の代表特性(評価特性)として選択した。分散分析では、設計要因の特性に対する影響度を一次および二次に分解する方法を用いた。

分散分析で有意さ有りと判断された設計要因、次数成分を用いて最大反力の推定式を作成した。式中のA,B,D,μは設計要因を示す。

最大反力=0.5087-0.2939(A-1.75)+0.9994(B-0.345)+0.8664(D-0.6)+0.083(μ-0.15) [N]    ----式(1)

感度解析

推定式を各設計要因で偏微分することにより表―2に示すような最大反力に対する感度を求めることができる。この感度は、設計要因の値を単位量だけ変化させたときの最大反力の変化量を直接表す定量的な影響度を示している。設計要因の感度による定量的な影響順を下記に示す。

B>D>A>μ

これらの結果から最大反力に対して設計要因Bおよび設計要因Dの影響度が高いことが分かる。この設計要因Bと設計要因Dは、丸型ゴムスイッチのスカート部の厚みを決めている要因である。また、3番目に高い影響度を示した設計要因Aは、スカート部の立ち上がり角度を決めている寸法である。これらの寸法で形状が決定されるスカート部は経験的に最大反力に対し最も影響の強い部分として知られており本解析結果が妥当であることが分かる。

Table.2 : Sensibility of design factors
Factor Sensibility
-0.2939 [Nmm]
0.9994 [N/mm]
0.8664 [N/mm]
μ 0.083 [N]

ばらつきの評価

一次近似二次モーメント法により設計要因のばらつきによって発生する最大反力のばらつきの評価を行った。この評価は、設計要因が相互に無相関に変動する完全無相関として行った。設計要因の標準偏差σfは、変動係数を寸法が3%、摩擦係数が20%として求めた。最大反力の推定式を基に作成した最大反力の分散Var[U]の推定式を示す。

Var[U]=(0.008817A)2+(0.02998B)2+(0.02599D)2+(0.0166μ)2    ----式(2)

最適化計算

逐次二次計画法により使用材料コストの最小化(=最小断面積とした)を目的に丸型ゴムスイッチの断面寸法の最適化計算を行った。挙動制約関数には、ばらつきを考慮するために最大反力の推定式と標準偏差の推定式である式(2)の平方根を組み合わせた式を用いた。最適化問題の設定を下記に示す。なお、設計要因は全て連続変数とし、最適化計算にはSQP法を用いた。

Table.3 : Results of an optimization
設計要因 設定5要因
目的関数 1/2断面の断面積 → 最小
断面積=0.5(D+2.3)(A+B-1)-1.15(A-1)+0.5(C-A-B)+1.2 [mm2]
挙動制約条件 最大反力-最大反力のばらつき(標準偏差)≧0.5 [N]
最大反力+最大反力のばらつき(標準偏差)≦0.55 [N]
側面制約条件 各設計要因の水準範囲
最適化結果 目的値 : 断面積=2.11 [mm2]
変数値 : A=1.74 [mm],B=0.335 [mm],C=2.45 [mm],D=0.621 [mm],μ=0.2

参考文献

’95年度横浜国立大学生産工学科博士論文「統計的設計支援システムの開発と応用」 柏村 孝義

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